うつ病の診断基準
- Keishu Shimano
- 1月12日
- 読了時間: 3分
更新日:4月18日
よこはま北星こころとからだのクリニック、院長の島野です。うつ病の診断基準について詳しく解説します。

診断基準とは?
精神科で使う診断基準には大きく分けて2つあります。
ICD-10
WHOが監修している国際疾病分類です。日本国内では行政の各種手続き(障害年金など)の根拠として用いられています。2019年には改訂版となるICD-11が発行されましたが、まだ日本国内での運用は始まっていません。
DSM-5
アメリカ精神医学会が発行する診断基準です。主に研究の用途で用いられています。全体的に文章が簡潔で分かりやすく、診断基準も「症状がn個あったら陽性」という感じで、ICD-10より理系な雰囲気です。
今回の記事では、診断書等で身近に関わりのあるICD-10の診断基準について解説します。
ICD-10のうつ病診断基準
抑うつ気分 |
意欲低下 |
集中困難 |
易疲労感 |
食事量低下 |
不眠 |
自責感 |
焦燥感 |
希死念慮 |
上記のような症状が2週間以上にわたって持続していること |
ズラリと並ぶ項目に圧倒されますが、最も大切なことは「2週間以上にわたって持続していること」です。嫌なことがあれば、誰でも落ち込んで食欲がなくなり、眠れなくます。では正常と病気をどう分けるか。その境目がまさに「2週間以上続くかどうか」です。2週間以内に改善する症状であればうつ病の心配はない、ということですね。
重症度はどう分ける?
うつ病はその程度によって軽症・中等症・重症に分類されます。この重症度分類についてもICD-10の中に記載されています。
軽症 | 症状による生活への影響がない |
---|---|
中等症 | 軽症と重症の間のもの |
重症 | 症状により社会活動が妨げられている |
この表に従えば、落ち込んでいても仕事に行けていれば軽症のうつ病で、仕事に行けなくなれば重症、ということになります。しかし実際はうつの症状の程度も含めて評価をします。この表はあくまで目安ということですね。
重症度は、薬物療法を行うかどうかを決める基準となるので重要です。軽症であれば薬物療法は不要です。中等症、重症であれば薬物療法を行うべきです。日本うつ病学会が発行している治療ガイドラインにもそのように記載されています。これは誰かが適当に思い付きで決めているのではなく、疫学データを統計処理した結果得られる最良の方策です。
また、幻覚や妄想などの症状がある場合には重症と分類されます。重症の場合は抗うつ薬だけでなく、抗精神病薬を併用することが必要です。
まとめ
うつ病の診断基準や重症度分類は意外とシンプルです。しかし症状は多彩で、他の疾患との区別が難しい病気でもあります。うつ病はその知名度の割に、命に関わる重大な疾患でもあり、早めの対処が大切です。うつ病かな?と思ったら、お近くの心療内科・精神科への受診をおすすめします。
監修:島野 桂周(精神科医・精神保健指定医)
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