「よこはま北星こころとからだのクリニック」で心療内科・精神科を担当している、院長の島野です。
心療内科やメンタルクリニックで診断書をもらう時、診断名に「抑うつ状態」と書かれていたことはありませんか?このページでは「抑うつ状態」とは何か、について解説します。
1. 抑うつ状態とは、状態像のこと
まず「病名」と「状態像」の違いについて確認しましょう。「病名」とは、そのまま病気の名前のことです。高血圧症、脂質異常症、糖尿病などですね。状態像というのは、「診察をした時点での状態」のことを指します。例えば下記のようなものがあります。
幻覚妄想状態
精神運動興奮状態
昏迷状態
統合失調症残遺状態
抑うつ状態
躁状態
せん妄状態
もうろう状態
認知症状態
上記の用語は「まさに今、どのような状態か」だけを表現するものです。今の状態が何によってもたらされたのか、つまり原因は含まれていません。「抑うつ状態」と一言で表現されますが、その背後には様々な原因が考えられます。うつ病による抑うつ状態、適応障害による抑うつ状態、甲状腺ホルモンの異常による抑うつ状態など。
平たく言えば、「状態像」とは「原因はさておき、今の状態はこうです」と表現しているに過ぎません。
2. 診断書に抑うつ状態と書かれていました。私はうつ病ですか?
抑うつ状態というのは状態像ですから、抑うつ状態=うつ病ではありません。ただしうつ病によって抑うつ状態になっている可能性は考えられます。診断書に「抑うつ状態」と記載されていたら、病名は何が考えられるのか、主治医に確認してみると良いでしょう。
3. 抑うつ状態ではどんな症状がありますか?
抑うつ状態と判断するには、根拠となる症状が必要です。抑うつ状態の症状には下記のようなものがあります。
気分の落ち込み
意欲の低下
食欲の低下
過度な不安
不眠もしくは過眠
疲れやすさ
集中困難
自責感
希死念慮
上記の症状が当てはまるかどうかをみながら、抑うつ状態かどうかを判断します。
4. 「抑うつ状態」と、「うつ状態」は同じ?
同じと考えて良いでしょう。「抑」が付くかどうかの違いですが、基本的にどちらも同じ状態を指しています。ただし各種診断書の様式やICD-10の日本語訳などを参照すると、基本的に「抑うつ状態」や「抑うつ症状」という用語で統一されていますので、「抑うつ状態」が正式な名称と考ええよいでしょう。
5. 「抑うつ症状」「抑うつ気分」ってなんですか?
診断書の病状の部分に「抑うつ症状を認め、休職を要する」などと記載されていることがあります。「抑うつ症状」とは、「抑うつ状態に関わる症状」のことです。先程のチャプター3でも説明しましたが、気分の落ち込み、意欲低下、食欲低下、不眠などの症状をひとまとめに「抑うつ症状」と表現しています。
「抑うつ気分」とは気分の落ち込みのことです。中身は単なる気分の落ち込みですが、精神医学用語としては「抑うつ気分」と表現します。
6. 抑うつ状態の原因はなんですか?
抑うつ状態の原因として以下のものが挙げられます。
などなど・・・。
診断書に「抑うつ状態」と書かれていたら、その原因は何が考えられるのか、念のため主治医に確認してみましょう。
監修: 島野 桂周(精神科医師、精神保健指定医)
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